本記事では、Donald A. Neumann先生の名著『Kinesiology of the Musculoskeletal System』をもとに、脛骨大腿関節の関節運動学をわかりやすく整理しました。
臨床推論に直結する要点をまとめていきますので、ぜひリハビリ指導や動作分析に役立ててください!
脛骨大腿関節(Tibiofemoral Joint)とは?
脛骨大腿関節は、脛骨(Tibia)と大腿骨(Femur)の間に形成される蝶番関節(hinge joint)です。
主な役割は、荷重支持と動作の柔軟性確保です。
関節面は楕円形かつ非対称な形状をしており、純粋な回転運動ではなく、回転+滑り(roll and glide)を組み合わせた複雑な運動が特徴です。
主な運動(運動面と軸)
運動 | 運動面 | 軸 |
---|---|---|
屈曲(Flexion) | 矢状面(Sagittal plane) | 前額軸(Frontal axis) |
伸展(Extension) | 矢状面(Sagittal plane) | 前額軸(Frontal axis) |
内旋(Internal rotation) | 水平面(Transverse plane) | 垂直軸(Vertical axis) |
外旋(External rotation) | 水平面(Transverse plane) | 垂直軸(Vertical axis) |
特に屈曲時に脛骨の回旋運動が発生する点は、臨床でも非常に重要です!
関節運動学(Arthrokinematics)
膝関節伸展時を例に
- 脛骨固定・大腿骨が動く場合
- 大腿骨は前方に転がりながら、後方に滑る
- 大腿骨固定・脛骨が動く場合
- 脛骨は前方に転がり・前方に滑る

大腿骨側が動くときと脛骨側が動くときで、滑りの方向が逆になるので注意!
特に臨床では、座位→立位(スクワットや立ち上がり)などでこの運動パターンを意識することが大切です。
スクリューホームムーブメント(Screw-home movement)
膝関節伸展の最終局面では、
- 脛骨が外旋(open chain動作)
- または大腿骨が内旋(closed chain動作)
することで、最大安定化が得られます。

これは脛骨と大腿骨の形状差(特に内側顆が長い)や、前十字靭帯(ACL)の緊張によって生じます。
Screw-home movementは、立位時の関節安定性を高め、筋活動量を減らす重要な現象です。
膝関節にかかる力学的負荷
- 圧縮力(Compression):荷重時に関節面にかかる
- せん断力(Shear):脛骨前方移動を促す力(特にACL損傷に関連)
- 回旋力(Rotational force):ねじれに伴う負荷(半月板損傷リスク)
臨床で押さえたいポイント
- 脛骨大腿関節は回転と滑りの組み合わせ運動
- 屈曲・伸展だけでなく回旋運動も必須
- 立ち上がり、歩行などの日常動作分析にScrew-home movementの知識は不可欠
- 力学的負荷を意識してリハビリプログラムを構成する
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