【書籍紹介】臨床家必読!『膝関節拘縮の評価と運動療法』の実践ガイド

おすすめ書籍

―『膝関節拘縮の評価と運動療法 改訂版』の書籍紹介―

膝関節拘縮は、術後や外傷後に多く見られる運動制限の一因であり、理学療法士にとって“治療効果が可視化しやすい”と同時に、“改善困難なケース”としても知られています。

そんな難治性拘縮に対して、臨床的視点から詳細にアプローチする本書『膝関節拘縮の評価と運動療法 改訂版』は、拘縮治療の実践力を飛躍的に高めてくれる一冊です。


各章の紹介

第1章:膝関節拘縮の病態とメカニズム

膝関節拘縮の成因を、関節包・滑膜・筋・脂肪体・皮膚などの組織ごとに分けて解説。

特に「滑走性の喪失」が中心的キーワードとなっており、なぜストレッチだけでは治らないのかが理解できます。

第2章:拘縮の原因組織別の評価手法

臨床での評価に役立つ具体的な手技を網羅。

膝蓋下脂肪体の線維化、内側広筋下の癒着、後方関節包の硬化など、触診と動きから見抜く実践テクニックが充実しています。

第3章:拘縮の動作分析と機能的評価

歩行・立ち上がり・階段昇降など、動作中に表れる膝拘縮のサインを分析。

特に、膝伸展制限が股関節・足関節に及ぼす影響を、運動連鎖の観点から捉えています。

第4章:拘縮に対する徒手的アプローチ

組織別のモビライゼーションやスライディング技術を実技写真とともに解説。

内側広筋の滑走誘導や、脛骨の前方滑りの再学習など、「動かす前に滑らせる」ための手技が中心です。

第5章:運動療法とセルフエクササイズ

荷重刺激を利用した伸展獲得法や、膝周囲筋の協調性改善プログラムなどが紹介されています。

術後患者や高齢者への配慮を含んだ、現場でそのまま使えるメニュー構成です。

第6章:臨床ケースから学ぶ拘縮への対応

実際の症例を通じて、評価から介入、経過観察までの流れを学べる構成。

難渋例に対してどう考えるか、チームで共有すべき視点が描かれています。

本書籍の特徴

「拘縮」の正体に迫る理論と構造的理解

本書の大きな特徴の一つは、「関節可動域制限の原因を細分化し、どの組織が、どのように制限を起こしているのか」を徹底的に追及している点です。

筋・関節包・滑膜・脂肪体・靱帯など、それぞれの組織が拘縮に及ぼす影響をイラストや臨床写真とともに丁寧に解説しており、「なぜ可動域が出ないのか」ではなく、「どこをどう治療すべきか」という視点に立った内容構成となっています。

また、拘縮を単なる“硬さ”ではなく、「滑走性の喪失や組織の癒着による複合的制限」として扱っている点も、他書と一線を画します。


臨床に直結する評価技術

膝関節の拘縮に対する評価では、「単純なROM評価では掴みきれない制限因子をどう捉えるか」が本書の焦点です。

特に、内側広筋下の滑走障害膝蓋下脂肪体の線維化後方関節包の癒着など、詳細な評価方法を段階的に紹介しており、実技に直結する内容になっています。

例えば、

  • 膝蓋骨の動きの偏りが示す滑走制限のサイン
  • 膝窩部の硬結が示す後方包の関与
  • 屈曲制限が100°を超えるか否かによる介入判断

など、評価から治療戦略までを一貫して理解できる構成です。


運動療法のポイントは“滑走”と“連動”

運動療法の章では、拘縮に対して有効なストレッチ・モビライゼーション・荷重練習が豊富に紹介されています。

特に印象的なのが、「一つの筋をストレッチしても改善しない理由」を、滑走の視点と筋膜の連動性から説明している点です。

例えば、

  • 内側広筋の滑走性改善のための伏臥位ハンドリング法
  • 前十字靱帯再建術後に有効な脛骨前方滑りの誘導法
  • 膝関節伸展制限へのアプローチとしての脛骨外旋誘導と大腿筋膜張筋の関与

など、拘縮に対して「ただ引っ張る」のではなく、「どう動かすか」が重要であることが明確に述べられています。


おすすめの読み方

① 初学者・若手セラピストは【第1〜2章】を軸に

「拘縮とは何か?」「どの組織が可動域制限に関わるのか?」を構造的に理解するために、第1章・第2章の熟読がおすすめです。

ここを押さえることで、「評価=原因特定」という軸が生まれます。

② 拘縮改善の実践技術を学びたい方は【第4〜5章】から

現場での介入に悩んでいる場合は、第4章の徒手療法第5章の運動療法から読むのが効果的。

評価をすでに行っている方は、改善手技の引き出しを増やす目的で重点的に活用しましょう。

③ ベテランや教育係は【第3章と第6章】で応用と指導を

動作分析を活用した「制限の二次的影響」や、症例展開を通じた教育視点が学べる第3章・第6章は、若手指導やチームアプローチにも役立ちます。


拘縮治療に悩む理学療法士へ

本書は、術後の膝関節拘縮に悩む若手~中堅理学療法士に特におすすめです。

「徒手で少しずつ改善してきたけど、どうしても限界がある」

「可動域訓練をしているが、痛みが強くて進められない」

そんな場面に直面している方にこそ、本書が指し示す「評価と治療の一致」という視点が、新たな臨床展開をもたらしてくれるはずです。


まとめ

『膝関節拘縮の評価と運動療法 改訂版』は、関節可動域の改善という目に見える効果を導きつつ、その背景にある組織病態の理解と運動学的アプローチを深めてくれる、現場志向の良書です。

拘縮治療に対するアプローチを“感覚”ではなく、“根拠”に基づいて実践したい理学療法士にとって、非常に信頼できる一冊となるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました