著者:村野 勇/監修:林 典雄
出版社:運動と医学の出版社|拘縮シリーズ
はじめに
足関節拘縮は歩行や立位保持、バランス機能に大きな影響を及ぼす重要な問題です。
特に脳卒中後の患者や高齢者においては、足関節背屈制限がリハビリテーション全体の進展を左右すると言っても過言ではありません。
本書『足関節拘縮の評価と運動療法』は、足関節拘縮の病態理解から評価、治療アプローチまでを体系的に解説しており、現場の臨床家にとって即戦力となる実践的な一冊です。
各章の紹介
第1章:足関節拘縮の基本と病態理解
拘縮の成因分類(筋性・関節包性・皮膚性)と、それぞれのメカニズムを明快に解説。
拘縮の「種類と評価の対応」が把握しやすい構成です。
第2章:機能解剖と足関節のバイオメカニクス
距腿関節・距骨下関節の滑りや関節包の構造などを図解とともに解説。
超音波画像(エコー)による腓腹筋・ヒラメ筋・アキレス腱・皮下組織の走行・滑走性の評価も豊富に掲載されており、静的な図では捉えきれない情報を得られます。
第3章:評価方法と臨床的見立て
視診・触診・関節可動域の評価に加え、エコーを用いた軟部組織の厚さ・滑走評価が詳細に紹介されています。
例えば「皮膚と皮下組織の滑走性を確認するエコー画像」など、臨床のリアリティが詰まった画像資料が多数掲載されており、評価技術の質向上に役立ちます。
第4章:拘縮の原因別アプローチ
拘縮の原因別(筋・関節包・皮膚)にアプローチ方法を分類。
関節モビライゼーション、皮膚リリース、筋膜スライディングの方法とともに、施術前後のエコー画像を比較しながら解説している点は本書の大きな特長です。
第5章:歩行と足関節拘縮
足関節の拘縮が歩行に及ぼす影響を歩行フェーズごとに整理。
エコー評価と歩行分析を組み合わせた症例提示により、実践的な思考の流れがつかめます。
本書の特徴
- 豊富なエコー画像による視覚的理解
静的な解剖図だけでなく、実際の超音波画像を通して軟部組織や関節の状態を把握できるため、評価・治療の精度が飛躍的に向上します。 - 機能解剖 × 動作 × 徒手療法の統合的視点
解剖学・バイオメカニクス・臨床技術が融合されており、根拠に基づいたアプローチが学べます。 - 拘縮の原因別に整理された介入戦略
臨床で直面する問題を分類し、対応法をシステマチックに提示しているので、すぐに現場で活かせます。
こんな理学療法士におすすめ
- 足関節背屈制限の原因を正確に見極めたい方
- 超音波(エコー)評価を臨床に取り入れたい方
- 拘縮に対する徒手療法の幅を広げたい方
- 歩行に影響を与える因子を機能解剖的に理解したい方
おすすめの読み方
- 第2〜3章でエコーを用いた評価技術を習得
実際の画像を用いて、構造と機能を関連づけながら理解するのがおすすめです。 - 第4章の介入法を症例に応じて繰り返し参照
画像によるBefore/Afterの変化を参考に、自分の介入結果も比較してみましょう。 - 第5章で歩行とのつながりを再確認
歩行分析に関心のある方には、拘縮が動作に及ぼす影響を視覚的に学ぶ機会になります。
まとめ
『足関節拘縮の評価と運動療法』は、「見て、触れて、動かして理解する」ことを支援してくれる一冊です。
特にエコー画像を通じた臨床現場の再現性が非常に高く、視覚的な裏付けを持った治療戦略を学びたい理学療法士に強くおすすめできます。
足関節の治療に自信を持ちたい方、必携です。
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